政府は増え続ける空き家問題を解消するために、倒壊の恐れがある空き家等に対して固定資産税が6倍になる措置を行ってきました。
また、さらなる対策強化のために2023年の改正案では固定資産税が6倍になる空き家の条件が増えることが決定しました。
つまり、今まで以上に空き家を放置するリスクが高くなったと言えます。
そこで今回は、空き家の固定資産が最大6倍になる条件や高くなるタイミング、空き家の税金対策についてご紹介します。
相続したご実家など税金対策に有効な期間は限られているため、記事を参考に空き家の対応について検討してみてくださいね。
https://jutaku-ichiba.com/column/%E3%80%902023%E5%B9%B4%E3%80%91%E7%A9%BA%E3%81%8D%E5%AE%B6%E3%81%AE%E5%9B%BA%E5%AE%9A%E8%B3%87%E7%94%A3%E7%A8%8E%E3%81%8C6%E5%80%8D%EF%BC%9F%E5%84%AA%E9%81%87%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E6%94%B9%E6%AD%A3/
政府は2023年3月に空き家の優遇措置の一部見直しを盛り込んだ「特別措置法改正案」を閣議決定しました。
これにより、今までは固定資産税を安く抑えていた空き家でも、住宅用地の特例措置が適用されず一気に固定資産税が6倍になる恐れがでてきました。
住宅用地の特例措置とは、住宅が建っている土地に対して固定資産税が1/6や1/3と減額される措置です。
【住宅用地の特例】
住宅用地の区分 |
固定資産税の計算式 |
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) |
固定資産税評価額×1/6×1.4% |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) |
固定資産税評価額×1/3×1.4% |
【例】
- 特例適用:1000万円×1/6×1.4%=23,380円(固定資産税)
- 適用外:1000万円×1.4%=140,000円(固定資産税)
上記のように住宅用地の特例の有無によって税金の負担に大きな違いが生じることがわかります。
ですが、すべての空き家が2023年以降増税するわけではありませんので安心してください。
どのような空き家が対象になるのか詳しくご紹介します。
「特定空き家」改正後は「管理不全空き家」も6倍
2015年に施行された「空き家対策特別措置法」において、固定資産税が1/6になる優遇措置を適用されない住宅は「特定空き家」が対象でした。
【特定空き家とは】
- 倒壊や著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- 周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
「特定空き家」に指定される状態は、倒壊しそうな極めて危険性の高い物件が対象になります。
全国で約800万戸ある空き家の中で実際に特定空き家等の除去は5年間で約1.2万物件とごく一部です。
ですが、2023年の改正以降「管理不全空き家」も優遇措置の対象外になることが決定しました。
【管理不全空き家とは】
つまり、特定空き家より前の段階の状態でも「管理不全空き家」として勧告を受け、固定資産税が6倍になる可能性があるということです。
改正前より条件が厳しくなったということがわかります。
参照サイト:国土交通省 空き家対策に取り組む市区町村の状況について
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空き家の固定資産税はいつから6倍?指定を受ける流れ
「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定後、すぐに固定資産税の軽減がなくなるわけではありません。
勧告を受けると固定資産税が6倍に増税します。
【流れ】
「指定」→「助言・指導」→「勧告」→「命令」→「行政代執行」
指定を受けてから空き家の適切な管理を行うように「助言・指導」を受けます。樹木の撤去や修繕、解体が必要になった場合に費用を自己負担して指示に従います。
適切な対応をすることで「特定空き家」などの指定を解除することが可能です。
ですが「助言・指導」を無視して放置することで次の「勧告」を受け、固定資産税の優遇措置の対象外になります。
固定資産税は1月1日を基準日としており、指定の解除を受けない限り固定資産税が高いままの支払いが続くことになります。
空き家の固定資産税を高くしない対策
行政の指示を無視せず指定を解除
「特定空き家」や「管理不全空き家」として指定を受けた後に、行政からの指示があります。指示に従うことで指定を解除でき、従来通りの1/6の固定資産税が適応されます。
「住んでいない空き家の修繕や解体などの費用を払いたくない!」という方も多いと思いますが、放置することで無駄な出費が増えます。
毎年かかる6倍の固定資産税や行政代執行によって行われた割高な解体費用や修繕費用などです。
指定を受けた空き家を放置し続けることはデメリットしかないため、手続きが面倒でも行政や専門家に相談しながら適切な対応を検討してみましょう。
空き家を売却する
空き家を売却すれば固定資産税の支払いや維持管理のコストを省くことができます。
放置するより売却してしまったほうが気持ち的にも経済的にもラクになります。
相続した空き家売却では「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」を利用することが可能です。
売却で得た利益にかかる税金の負担を減らし、資産を残しやすくなります。
ただし、相続開始の日から3年を経過する12月31日までが対象期限になるため、相続後は放置せずに早めの売却を検討してみましょう。
参照サイト 国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
空き家を解体して更地にする
空き家を解体して「更地」として売却や管理する方法があります。
古い空き家が建っている状態より解体して更地にしたほうが売却しやすいメリットがあります。
ですが建物状態によってはリフォームして売却したほうが良いケースもあるため、解体前に地域に詳しい不動産会社に相談してみましょう。
また、更地での管理は維持しやすく不法侵入など犯罪に使われる心配もなくなります。
ですが、利用しない更地でもやはり固定資産税は毎年かかるため、売却や駐車場などの土地活用がおすすめです。
空き家解体でも固定資産税が6分の1に減免?
空き家を解体した場合、通常であれば住宅用地の特例が適用されなくなるため、固定資産税が最大で6倍に増税されます。
ですが、固定資産税の増税を危惧して所有者が空き家の解体をしないケースも多いことから、更地でも住宅用地の特例が2年~3年など期間限定で適用される市区町村があります。
ですが、実施している市区町村の数は圧倒的に少ないため、基本的に解体後は無駄な税金の支払いを防ぐためにも売却や土地の有効活用をする流れになります。
空き家の固定資産税は払う人は誰?
空き家の固定資産税を払う人は「1月1日時点の所有者」になります。
所有者というのは登記簿に記載されている人のことをさします。
また、1月1日時点の所有者が亡くなっている場合には「相続人」に納税義務が発生します。
固定資産税を払わないで放置していると、通常の税金に追加して延滞料を支払うことになるため注意しましょう。
空き家放置にメリットはなく売却や土地活用を検討しよう
空き家の固定資産税は「特定空き家」や「管理不全空き家」として勧告を受けることで住宅用地の特例から除外されます。
ですが、特定空き家等に指定されていない場合でも空き家を放置することで「火災」や「倒壊」、「近隣住民とのトラブル」などリスクが高くなります。
そのため、固定資産税の高さに関係なく空き家は放置しないことが得策です。
また、空き家の最適の売却方法や活用方法などは立地や状況によって異なるため、地域の市場に詳しい地域密着型の不動産会社への相談がおすすめです。
空き家という資産を無駄に放置せず、早めに自身の利益になる対応を検討してみてくださいね。