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1. 「給料が上がらない」と悩むのは高卒者も大卒者も変わらない
「先月あんなに働いたのに、今月のお給料はたったこれだけ…」
「正社員になれば高いお給料がもらえると思っていたのに、意外と少ない…」
「入社して結構経つのに、年収が300万円前後のまま一向に上がる気配がない…」
こんなふうに思っているのは、高卒者も大卒者も同じですが、「なぜお給料が上がらないんだろう?」と考えても、なかなか答えが見つからない方も多いのではないでしょうか?
働くことに関する問題、とりわけ「お給料」に関する問題については、人を雇う側の企業と雇われる側の従業者とではまったく考え方が異なりますが、どれだけ働いてもお給料が上がらない主たる理由は、日本で20年以上続いている「デフレ」が原因です。
デフレとは「デフレーション(英: Deflation)」の略で、物価が持続的に下落していく経済現象のこと。
モノが売れなくなると物価が下がり、その結果、企業の収益が減少し働く人たちのお給料が下がる。
この図のような経済の悪循環を「デフレスパイラル」と呼びますが、もしかしたらみなさんも昔、学校の授業で耳にした記憶があるかもしれませんね。
もちろん理由はこれだけではありませんが、特にいまはコロナの影響で生活費も下がり続け、それにともなって労働力の価値も下がり続けているため、結果、高卒・大卒といった学歴に関係なく、社会全体において平均給料が下がっているのです。
では、日本国内で働く人たちのお給料は、この30年間でどれだけ下がってしまったのでしょうか?
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2. 働く人のお給料は30年間でどれだけ減ってしまったのか?
国税庁の民間給与実態統計調査結果をもとに、各年代の平均年収を算出したところ、以下ような結果に。
平均年収 |
1990年代 |
2000年代 |
2010年代 |
約455万円 |
約439万円 |
約420万円 |
参考:民間給与実態統計調査結果(平成9年~令和元年)|国税庁
10年間ごとの平均年収を比較すると、1990年代から2000年代の10年間で約16万円、2000年代~2010年代で約19万円も下がっています。
参考:民間給与実態統計調査結果(平成9年~令和元年)|国税庁
さらにくわしい推移をグラフ化してみると、平均年収のピークは1997年の467万円。そして2008年9月のリーマン・ショックで急激に下がり、その後一時的には回復したものの、ここ30年の間に民間の平均年収はおよそ35万円も減っているのです。
この金額を月収に換算すると、30年間で日本人の給料は1ヶ月あたり約3万円も減収しているということに。
また昨年末、日本労働組合総連合会が全国の18歳~65歳の被雇用者1,000名を対象にリサーチ*1 したところ、「コロナ禍の影響で、今年の賃金総額が減る見通しである」と答えた人は29.9%。
さらに帝国データバンクが2021年度に実施した企業の意識調査*2 によると、「賃金改善はない・わからない」と答えた企業は58%で、そのうち7割が「新型コロナウイルスによる自社の業績低迷」を理由に挙げています。
とはいえ、賃金改善を見込む企業も42%ほどあるので、昇級を見込める可能性もゼロではないですが、こうした社会情勢からも、日本の経済が再び活性化し、誰もが満足するお給料を手にできる日がくるのは、もう少し先の未来となるかもしれません。
*1:コロナ禍における雇用に関する調査2020|日本労働組合総連合会
*2:帝国データバンク「2021年の景気見通しに対する企業の意識調査」|PR TIMES
3. 仕事で成果を出してもお給料が上がらないのはなぜ?
さて、年功序列制度にかわって成果主義が人事制度に導入されつつある、と言われてしばらく経ちますが、
「こんなに成果を上げたのに昇給する気配がない」
「あんなに実績を出したのに給料が1円も上がらない」
「もしかしたら、自分が高卒者だから評価されないんじゃないか?」
…と考えながら、日々モヤモヤした気持ちで働いている人も多いのではないでしょうか?
でも、残念ながら日本企業のほとんどは、成果や実績を上げればお給料がUPするわけではないのです。
こちらは、企業側が社員の基本給を決めるときに最も重要視する要素を表した図です。
出典:賃金事情等総合調査/令和元年賃金事情等総合調査 令和元年賃金事情調査|政府統計の総合窓口(e-Stat)
このグラフをみると、社員の基本給を決めるにあたって、「業績・成果等」は3.7%しか考慮されないことがわかります。
一方、それよりも重視されているのは「職務内容・職務遂行能力等」。また「総合判断」が47.8%も占めていることから、実際は経験によって培われた能力や、その人の社会人基礎力を考慮したうえで給料が決められていることがわかるでしょう。
「社会人基礎力」とは、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱したスキルのこと。「前に踏み出す力」・「考え抜く力」・「チームで働く力」の3つの能力で構成され、人生100年時代においては欠かせないスキルと言われています。
したがってこれら3つの能力をバランスよく発揮しながら会社に貢献し、自ら積極的にキャリアを切り開いていけば、年収アップにつながる兆しが見えてくるかもしれません。
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4. 高卒者と大卒者の平均年収を男女別に比較してみると?
そうは言っても、「高卒者と大卒者では、学歴による給料差があるから不公平だ」と考えている方も中にはいることでしょう。
そんな両者の平均年収を20代の男女別に比較してみると、このような結果となりました。
|
大卒・大学院卒 |
高校卒 |
年齢 |
20代前半
| 20代後半
| 20代前半
| 20代後半
|
男子 |
229.2万円 |
266.4万円 |
203.0万円 |
233.4万円 |
女子 |
224.8万円 |
249.9万円 |
186.4万円 |
198.3万円 |
出典:令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
20代前半では、大卒男子と高卒男子の平均年収差は、26.2万円。20代後半になると、その差は33万円にもおよびます。
また女子の場合、大卒者と高卒者の平均年収差は、20代前半で38.4万円。
そして20代後半では、51.6万円もの開きがありますが、統計上、学歴別に平均年収の差が出るのは「東京在住の大卒者が多い」ことも大きな理由です。
文部科学省が発表した「令和2年度 学校基本調査」によると、東京23区内に住む大学生の割合は全国の38.4%。また首都圏全体だと、全体の5割近い大学生が都心部に集中していることがわかります。
出典:学校基本調査 / 令和2年度 高等教育機関《報告書掲載集計》 学校調査 大学・大学院|文部科学省
加えて、大学卒業後は平均賃金の高い関東近県の大手企業に就職するため、首都圏以外の地域でも働く人が多い高卒者と比べて、大卒者の平均年収が高くなるのです。
転職・求人doda(デューダ)が2020年に発表した47都道府県の年収ランキングでも、平均年収が最も高かったのは東京都の444万円。この年収額は全国平均の409万円より35万円も高いことから、データ上では大卒者の年収が自ずと高くなっていることも頷けるでしょう。
5. 高卒者のお給料が高い仕事とは?将来性のある業界と職種8選
はいえ、大卒者の平均年収が高卒者よりも上回っているのは、あくまで統計データ上でのこと。
世の中には、高校卒業後にたった一人で企業を立ち上げて大成功を収めている方もいますし、たとえ大学を卒業しても、あえて正社員として就職せずにフリーターとして働く人だって大勢いるのです。
したがって、業界と職種選びさえ間違わなければ高卒者であっても大卒者に負けない額の高収入を得ることは十分に可能ですが、高卒者のお給料が高い仕事とはいったい何でしょうか?
高卒者の平均年収が高い職種をランキング形式にまとめたところ、以下のような結果となりました。
出典:平均年収.jp・DODA・転職会議・人事院
また、コロナ不況に負けない高卒者の就職先におすすめな将来性のある業界と仕事は、次の8つです。