この前の休日にふらっとでかけたときに偶然目に入った1件の喫茶店。
雰囲気が昭和レトロっぽい感じが気に入って、ドアを開けて入る。
カウンターが3~4席にボックス席が2つほどの小さなその喫茶店は、10人も入れば窮屈に思えるほどで、BGMに聞き流せるくらいの邪魔にならない静かなクラッシック音楽が心地いい。
早い時間だったせいか、お客は誰も来ていなかった。
目を覚ましたかった私は、ホットコーヒーを頼もうと目の前にあるメニュー
に目を通していたところ・・・「珍しい飲み物あります」の文字が。
妙にその言葉がに気になった私は、コーヒーをやめ、その飲み物を頼むことにした。
「すみませーん。」
少し大きめの声で呼んでみるが、反応がない。店主は留守なのだろうか・・・
「あのー。すみませーん。」
すると、カウンターの陰から。70は過ぎていると思われる、腰の曲がったおばあさんが顔を出した。
「あいあいあいあいあい。爺さんはこの前なくなって・・・・」
いきなりわけのわからない会話を始めたこの老婆に、
「大丈夫かな、このしと」
と疑念を抱きつつも、よくよく聞いていると、夫婦でこの店を50年近くやってきたが、数年前夫を亡くし一人でこの喫茶店を続けているとのことだったようだ。
この間約30分。
長話に付き合わされた私は、少々苛立ちを覚えながらも、その飲み物をオーダーした。
10分ほど過ぎただろうか。かなり時間がかかっているが、珍しいというだけあって、準備に時間がかかってるんだろうなあ―。
などと感慨にふけっていたところ、
「あいあいあいあい。おまたせー。探すの時間かかっちまって。お客さんがめんどくさいもの注文するから。」
「あの・・・・これ、・・・新幹線のおもちゃぢゃ・・・」
「懐かしいだーね。息子が子供の時に買ってあげた乗り物のおもちゃだけど。当時は珍しく・・・」
「あのー、・・・これは珍しい乗り物ですよね。私が頼んだのは珍しい飲み物ですよ。」
「あーわりいだーね。最近耳が遠くなっちまって・・・」
そういって、再びカウンターの奥に引っ込んだ老婆は、数分後に現れ・・・
「はい、どーぞ。珍しいだ・・・・」
「おばあさん。あのおお、確かに珍しいですけど、置物ですよこれ。私は飲み物頼んだので・・・」
「あああーわりいだーね。最近耳が遠くなっちまって。飲み物ね。あいあいあいあい・・・」
そう言うと、カウンター横の冷蔵庫を開け、何やら取り出している姿が目に入った。
そして数分後・・・
「あの、これって・・・」
「はい、お待たせー。当時珍しいってはやったんだよね。」
目の前に出されたのは、最近では当たり前のメニューになっている「メロンクリームソーダ」だった。
コーヒー頼めばよかった・・な(^^;)
そう思いながら、出されたアイスとサクランボの入ったメロンソーダを飲み干し、店を後にした。
って、もうお昼ぢゃねーか。やべ、鬼嫁に怒られる。
・・・・・・
by フィクション小説デビューしようとひそかに野望を描いている熊猫狼w