https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2105/24/news013.html
一部の2in1 PCなどで、Windows OSとして「Windows 10 Home(Sモード)」と呼ばれるものが搭載されている。このSモードとはどういったものなのか、通常のHomeなどと何が違うのか、どうやってSモードを解除するのかについて解説する。
連載目次
2in1 PCなどで搭載されている「Windows 10 Sモード」とは?
2in1 PCなどで「Windows 10 Sモード」と呼ばれるエディションが搭載されている。このSモードは、通常のエディションと何が違うのか。
スマートフォンでは、基本的にGoogle PlayストアやApp Storeからしかアプリをインストールできない。Google
PlayストアやApp
Storeで配布されているアプリは、GoogleやAppleで審査されており、マルウェアが仕込まれたり、不要な情報収集が行われたりする危険性の低いものとなっている。
一方、Windows
PCでは、インターネット上で配布されているアプリを自由にインストール可能だ。こうした豊富なアプリが利用できる自由度が、Windows
PCの利便性を高めているといえる。ただ、自由にアプリがインストールできるということは、マルウェアがインストールされる危険性もはらんでいる。
一部の企業用途や教育現場においては、Windows
PCの利便性よりも、セキュリティを重視する傾向にある。そうした市場向けに、スマートフォンと同様、Microsoft
Storeからしかアプリ(ソフトウェア)をインストールできない、「Windows 10
Sモード」の提供が行われている(詳細は後述)。Microsoft
Storeでは、Microsoftがアプリを審査しており、安全と思われるものだけが配布される。
Microsoft Store以外でダウンロードしたアプリは実行できない
Google日本語入力のインストーラーを実行すると、このように警告ダイアログが表示され実行できない。このようにSモードでは、Microsoft Store以外でダウンロードしたアプリは実行できない。
量販店などで購入できるPCの中には、OS欄もしくはソフトウェア欄に「Windows 10
Home(Sモード)」と書かれているものがあるはずだ。例えば、Microsoftの「Surface Go 2」やASUSの「ASUS
VivoBook Flip 14」など、一部の2in1 PC(タブレットとノートPCの切り替えが可能なもの)で「Windows 10
Home(Sモード)」が搭載されている。
このSモードとはどういったものなのか、もしSモードを搭載したPCを購入した場合の対処方法などについて解説する。
Windows 10 Sモードとは
Windows 10 Sモードは、Windows 10
Homeだけではなく、Pro/Enterprise/Educationの各エディションに対して提供されており、プリインストールならびにボリュームライセンス契約でのみ入手可能だ(パッケージやダウンロードによる提供はない)。Creators
Update(バージョン1703)がリリースされた当時、Sモードは「Windows 10
S」と呼ばれるエディションの一種だった。しかし、April 2018 Update
(バージョン1803)から各エディションに対する「モード」に変更されている。
通常のエディションに対して、Sモードでは幾つかの機能を制限することで、セキュリティを高めている。
最も大きな制限は、前述の通り、Microsoft Storeからしかアプリがインストールできない。つまり、実行できるアプリは、プリインストールされたものか、Microsoft Storeから入手可能なMicrosoft Storeアプリ(UWPアプリ)に制限される。そのため、WebブラウザもInternet
ExplorerもしくはMicrosoft Edgeのみとなり、Google ChromeやMozilla
Firefoxは利用できない(Microsoft
Storeで配布されているWebブラウザは利用可能だが、マイナーなものしか見つからない)。ウイルス対策ソフトウェアも、Microsoft
Storeで提供されているものに制限される。
PowerShellやコマンドプロンプトの実行も制限されるため、バッチ処理による自動化を行う際などに困るかもしれない。また、WSL(Windows
Subsystem for
Linux)のインストール自体は可能だが、なぜかLinuxディストリビューションのインストールでエラーが発生してしまい実行できない。
コマンドプロンプトも実行できない
Sモードでは、コマンドプロンプトやPowerShellも実行できない。cmd.exeなどの実行ファイルはインストールされているものの、実行しようとすると、この警告ダイアログが表示される。
WSLはLinuxディストリビューションのインストールでエラーが発生
Sモードでは、WSL(Linuxサブシステム)とUbuntuなどのLinuxディストリビューションのインストールは行えるものの、Linuxディストリビューションの起動後、初期設定(実際にはLinuxのインストール)の途中でエラーが発生して実行できない。
また、利用できるアカウントはMicrosoftアカウントに制限され、Pro以上のエディションであっても、オンプレミスのドメイン(Active
Directory)には参加できないので注意してほしい(Azure
ADドメインへの参加は可能)。ドメインで一括管理している環境では、困ることになる。
プリンタを含む周辺デバイスも、Windows
10に標準搭載されているデバイスドライバで動作するものに限られるため、機能が制限される場合がある。デバイスドライバのインストールに独自のインストーラーの実行が必要なデバイスは、場合によっては使えない可能性もあるので、事前に確認した方がよい。
このようにSモードでは、さまざまな点が制限されているため、この状態で利用し続けるのはかなり特殊な用途に限られそうだ。Sモードを搭載するPCを購入した場合、特別な理由がない限り、まずこのSモードを解除することから始めることになるだろう。
Windows 10 Sモードを解除する
Sモードは、無償で解除して、ベースとなっているエディションにすることができる。つまり、Sモードでの利用が困難な場合は、Sモードを解除すればよいわけだ。ただし、一度Sモードを解除してしまうと、元に戻すことはできないので注意してほしい。
Sモードを解除するには、[Windowsの設定]アプリを起動し、[更新とセキュリティ]-[ライセンス認証]画面を開き、右ペインの「Windows 10 <エディション>に切り替える」欄の[Microsoft Storeに移動]リンクをクリックする。Microsoft Storeアプリが起動し、[Sモードをオフにする]画面が開く。ここで[入手]ボタンをクリックすればよい。
WindowsのSモードとは通常のWindowsから以下の機能を制限したモード(状態)です。
- Microsoft Store以外からのアプリのインストール
- Edge以外の既定ブラウザ
- Bing以外の検索プロバイダー
- Active Directoryへの参加
多数のPCを管理している組織ではこのような機能をわざわざ制限したい場合があります。
https://bibouroku.net/windows-s-mode
Microsoft Store以外からのアプリのインストール
危険なアプリをインストールさせないためです。
Microsoft StoreからインストールするUWP(Universal Windows Platform)アプリはすべてマイクロソフトによって安全性が確認されています。
SモードではUWP以外のアプリをインストールできないため、ウイルスが混入しているなど危険なアプリをインストールしてしまうことがありません。
また、長期使用(実際にはMicrosoft Store以外のアプリやドライバのインストール)によってWindowsの動作が遅くなる問題を回避することもできます。
ただ、Microsoft Storeは2021年秋に新バージョンのリリースが予定されおり、Win32アプリをサポートすると言われています。
たとえMicrosoft StoreがWin32アプリをサポートしてもSモードのWindowsではダウンロードできなくなるのでしょうか。
Edge以外の既定ブラウザ
Edgeとはマイクロソフト製のブラウザです。
昔のEdgeにはWindows標準のHTMLエンジン(EdgeHTML)とJavaScriptエンジン(Chakra)が使われていました。
それらの標準エンジンを使っていればEdge以外のブラウザでもWindowsストアで提供することができます(Chromeなどのマルチプラットフォーム対応ブラウザのほとんどはWindows標準エンジンを使っていないためWindowsストアで提供される可能性は低いです)。
そして、Windows 10 SモードでもそうしたWindowsストアのブラウザをインストールすることはできます。
しかし、それらを既定のブラウザにすることはできません。
既定のブラウザとはアプリの画面などでインターネットのリンクをクリックした時に使われるブラウザです。
つまり、
安全なWindows標準エンジンを使っているEdgeだけがSモードの規定ブラウザになれる。
という話でした。
ところがですよ、2020年1月にマイクロソフトはその安全なはずのEdgeのエンジンをChromiumに置き換えてしまいました。
ChromiumとはGoogle社のChromeブラウザにも使われているオープンソースのHTML・JavaScriptエンジンです。
つまり、現在のEdgeは安全なはずだったWindows標準エンジンを使っておらず、なぜ既定ブラウザはEdgeでなければならないのか理由がよくわからない状況です。
Bing以外の検索プロバイダー
検索プロバイダーとはEdgeに検索語句を入力した時、検索を実行するYahoo検索エンジン、Google検索エンジンやBing検索エンジンのことです。
Sモードではこの検索プロバイダーはBing固定で変更できません。
Bingとはマイクロソフトが提供している検索エンジンで、成人向けコンテンツを検索結果から除外するセーフサーチ機能があります。
Active Directoryへの参加
Active Directoryとはネットワーク上のWindows PCを管理するための仕組みです。
会社や学校など多数のPCを管理する必要がある組織で使われています。
Windows 10 Homeにはもともとこの機能がないため、事実上Windows 10 ProのSモードのみの制限となります。
ただ、Active Directoryへ参加できないと組織でSモードのPCを管理するのが面倒になる気がします。
Sモードはどちらかという個人よりは組織向けの機能だと思いますが、Active Directoryへの参加を制限する理由については公表されていないようです……。
2021年中にWindows 11のリリースが予定されています。
Windows 11ではProエディションのSモードが廃止され、SモードがあるのはHomeエディションのみとなっています。