白露のころは、赤とんぼを見かける機会が増える時期でもあります。
赤とんぼを見ると、どうしたわけか、郷愁にかられる人もいるのではないでしょうか。「夕焼けの空に赤とんぼ」となれば、なおさらですね。
さらに、童謡『赤とんぼ』(作詞/三木露風、作曲/山田耕筰)を聴くと、心地よい懐かしさに包まれる人もいるでしょう。
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一 夕焼、小焼の、あかとんぼ、負われて見たのは、いつの日か。
二 山の畑の、桑の実を、小籠(こかご)に、つんだは、まぼろしか。
三 十五で、姐(ねえ)やは、嫁にゆき、お里の、たよりも、たえはてた。
四 夕やけ、小やけの、赤とんぼ。とまっているよ、竿の先。
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一番の歌詞は少しわかりにくいかもしれません。
「負われて見たのは」は「背負われて、肩越しに見たのは」という意味で、背負っているのは、三番に出てくる「姐や(子守のお姉さん)」です。
明治から大正にかけて活躍した文豪、夏目漱石には、次の一句もあります。
〜生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉(あかとんぼ)〜
満49歳で亡くなった夏目漱石は、胃病などにたいそう苦しめられていました。そうした背景を知ると、なおさら胸を衝く句です。