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私は40代で、小学生の子供が2人います。
私の父親は公務員で収入もよかったのですが、自分さえよければよい人で、家にはおカネをほとんど入れない上に何百万もの借金を作り、その借金は母が返しました。昔から父母のけんかが絶えず、父は家族を持つのは世間体で、情のない人です。
私には2歳上の姉がいますが、この姉が父に生き写しで、海外で遊んで暮らし、母からおカネを吸い尽くして生きてきました。それは40代半ばになった今でも変わらず、年金暮らしの母は、姉からおカネをせびられる度にせっせと送り続けて、いよいよ生活にも困るようになってきました。私は、母も姉も父も嫌いですが、同居している母の喜ぶ顔が見たく、老いてきてもいるので支えていきたいと思って今まできました。
しかし母はそんな私の気持ちを知らず、私が、「姉もいい大人なのだし、おカネを送るのは姉のためにならない。働かせないと」と言うと、たちまち私を悪者扱いします。姉はかわいそうだ、お前は冷たいやつだと。懲りずに借金を重ねる父の頻繁にくる督促状にも、母は自分がまた払うと言います。
姉と父におカネがかかるから、生活費を今以上に出せと私たち夫婦には言い、私の悪口を言いふらしています。私も今が精一杯で、しかも遊んで暮らしている姉に送るために私たち夫婦、子供が節約していくのは合点がいきません。母と同居してくれている夫にも申し訳が立たず、もう家を出ようと話しています。このままでは私たちの生活まで成り立たなくなります。
母はとても気が強く、私の言葉に耳を貸しませんので、家を出るとなると老母とけんか別れは確実です。しかし、このままでは一家で借金地獄に陥ります。このまま縁を切ってしまっていいのでしょうか?
この種の家族問題は、これまでに何度か取り上げさせていただきました。しかし、最近になってまた何通もご相談が寄せられておりますので、今回は代表的な方のものを、採用させていただきました。
私は生きることに誠実でない人は、大嫌いです。仕事はするけれど誠実でないというタイプもありますが、それよりも何よりも、仕事をせず(働けるのに、自分が生きるための収入を得ようとせず)、他人のおカネを当てにして遊んで暮らしている人とは、あいさつを交わすのも嫌なほどです。
M様のお父様やお姉様の遊び癖や金銭感覚は、重症です。そしてお2人をそのようにさせているお母様も(私がこれまで見聞してきた話を総合しますと)、失礼ながらその重症に加担しています。お母様の喜ぶ顔が見たいと思って接してこられた貴女の行いが通じないお母様を、言葉で説得するのは難しいですね。
確かに順調でない子ほど、親は不憫に思うものです。それにおカネを借りたりせびったりする子は、親の情に付け入るのがとても上手で、この関係を断ち切るのは大変難しいです。
何度もだまされるのは、だました人を助長するだけ
私の知る青木氏(仮名)のこれは親子ではなく夫婦間の話ですが、最初、夫人の久美さんが、夫の貴志さんために、100万円もの「借金」をいとも簡単に調達してきたのです。貴志さんの商売はとても順調でしたが、使い込みはつるべ落としのようでした。久美さんは当初、貴志さんから、たまたま現金に詰まって友人から100万円を借りたと知らされました。
若い久美さんは、夫が友人から借金したことに仰天し恥ずかしく、翌日に、自分の姉から借りてきたといって、自分の“へそくり”を渡しました。久美さんは実の姉兄どころか両親にも借金するなどということは彼女の辞書になかった人で、それを知っている貴志さんは、翌日にいとも簡単に「借金してきた」妻に驚きました。
久美さんは「借金するのが平気で上手い人だったのだ」と夫に思わせてしまい、前回の借金を挽回するためにまた借金をし、夫の後方支援者になってしまいました。最初の1回が、その後の夫婦共倒れの分岐点だったと久美さん。おカネをせびる人は、工面する人の苦労などお構いなしです。
「嘘つきは泥棒の始まり」と子供でもいいますが、本当にその通りで、「今度こそ最後の頼み」とか「これがなければ今までの借金もすべて返せない」など、泣き落としから脅迫まで、あらゆる手を使われたと、この種の被害者は決まって口をそろえます。
何とおカネを借りる者たちのウソのセリフの似ていること。きっと貴女のお姉様も、泣き落としから母親が心配することまで、いろいろ手段を講じているに違いありません。お母様も悩みながら送金しておられるのは想像がつきますが、お姉様は母親が泣きごとを言って値打ちをつけているだけで、まだまだ母親はカネを持っていると信じています。そうでなければ恐ろしくて、遊んでなどいられないはずから。
久美さん始めこの種の被害者は、同時に加害者にもなります。遊んでおカネをせびって暮らせる人がいるということは、そのおカネの供給者がいるということです。供給者が自分のおカネでやりくりしているなら、他人がどうこう言う筋合いはありませんが、いくら善意が動機でも、第三者に迷惑をかけて、その不真面目な生活を応援するのは、厳しい言い方をすれば間接的に同罪です。
堕落した怠け者には、言葉ではなく行動で伝えよ
以前のコラムでも紹介した人ですが、どうしてもこの人に再登場願わねばなりません。晴夫(仮名)は大きな商いをしていましたが、ギャンブルに手を染めて、商売は順調なのに金繰りが悪くなり開店休業。母親のおカネを商売再開のためと偽って、ずるずる1億円以上引っ張り、使い込みました。
母親亡きあと、傷心癒えない姉の徳子(仮名)に、晴夫は借金を申し込みました。母親は自分のおカネも徳子と口を合わせ、徳子から借りてきたと偽って貢いでいました。返済せねばならないおカネであることを念押しするためです。
晴夫の申し出た金額は、商売を再開するために要る最低の車の台数の車検代・数十万円でした。晴夫からすれば、これまで莫大に応援してくれた姉が出せない金額ではありません。徳子はカネ離れのいい子で、実家の改築費用から親の生活費・旅行代から小遣いまで、惜しみなく実家に使う子でした。数十万円など、彼女にすればポケットマネーですが、これを断るといいます。
私が、「今度立ち直らないと、あの子は一生ダメになる。その金額で立ち直るなら安いもので、ダメでも被害は少ないから、貸してあげたら?」といいました。
ここからが目から鱗で、私は若い徳子に教えられたのですが、彼女は言いました。「一度でも貸すと、あの子は母親と同じように、私からも理由があれば借りられると思ってしまう。私は母と同じ過った道を、一歩でも歩まない姿を、あの子にみせてやります」。
それから晴夫は離婚し、広い家も借金で手放し、今は小さいアパートに住み、アルバイト生活をしています。その上、徳子を薄情だと責める声は聞いたことがありません。むしろ晴夫をふしだらな生活から目を覚まさせ、まっとうに働いて自分自身を養うという、人間としての当たり前の生活に戻した大恩人という評判です。このように言葉が通じない人には、行動あるのみです。
Mさま、貴女のお母様は、最終的には貴女も黙っていないと甘く考えているかもしれません。貴女方夫婦にしか頼る人がなく、また性格的に貴女に勝っているお母様は、貴女方夫婦にも要求の限度などないでしょう。そしてこれからも貴女がお母様の言いなりになることは、たとえ親孝行が動機でも、貴女方も、気楽な父親と姉、それを結果的に応援するお母様の伴走者です。
「人生泥棒」とは縁を切るべし
今の生活が苦しいと、別居など、その生活を変えるには新しいリスクや不安が考えられ、躊躇があるものです。しかしそれら考えられるリスクや不安は、貴女がこれから獲得しようとするものに比べれば、取るに足らないものですよ。
人生をなめている父親と姉と、その者たちの結果的なスポンサーのお母様を見ないで生活できるのです。そのことがどれだけ貴女方家族にとって貴重なことか、別居してみればお判りになると思います。
世界の人口の9人に1人が飢餓で苦しんでいます。生きたくとも病や事故で生きられない人も数知れません。健康な人が働かずに他人に迷惑をかけながら生きようとするなど、人生を冒涜する行為です。そんな者たちの伴走者になったり、その者たちに心を煩わされるだけでも、貴女の人生を泥棒されていると考えるべきです。絶対に相手にしてはいけません。
お母様には、貴女の姉と父親との金銭的な縁を切ったら、また同居しましょうと告げて、別居しましょう。それが永遠になっても、誰も貴女を責めませんよ。今のままだと共倒れになる道しか残されておらず、そうなれば誰が貴女の子供さんを守るのですか。