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- 官報には紙・インターネット版とデータベースになっている官報情報サービスがある
- それぞれの媒体に自己破産が掲載される期間
官報は紙のものについては1回出してしまえば終わりです。インターネット版官報は直近30日のものが掲載されています。なお、官報情報サービスという過去の官報を全て閲覧できるサービスがあり、ここには半永久的に残ってしまいます。ただ、官報の内容を確認する業者でもなければその内容を確認することはありません。
官報に自己破産をしたことが掲載される期間は、次のとおりです。
紙(発行日のみ)
紙で発行される場合、発行される日の紙面のみに掲載されます。
したがって、次に発行する官報に引き続き掲載されるようなことはありません。
インターネット版官報(直近30日)
官報はインターネットでも閲覧できるようになっています。
インターネット版官報については、直近30日分が閲覧可能で、自己破産の官報公告も30日間は継続して載っている状態です。
官報情報サービス(半永久)
過去の官報はデータベースとなって官報情報サービスで閲覧可能となっています。
この情報については半永久的に保存されることになっています。
なお、この官報情報サービスを利用するのは、官報の情報を確認する必要がある業者などに限定されており、利用にあたって個人のプライバシーの侵害行為を禁じています。
官報に掲載されても日常生活に影響する可能性は少ない
- 自己破産について官報に記載されても、日常生活に影響する可能性は低い
- 官報に掲載された破産者の情報をみだりに公開すれば、罰則を科せられる可能性がある
氏名や住所が官報に掲載されるのですね。自己破産をしたことが職場や知人に知られて、生活に影響しないか心配です。
確かに破産者の情報自体は官報に掲載されますが、日常生活に影響する可能性は低いといえます。一般の方が官報を閲覧する機会はあまりないことに加えて、膨大な情報の中から知人が自己破産したことを確認できるとは、一般に考えにくいからです。
官報に掲載されている自己破産者の名前を見たことがありますか?
自己破産をすると氏名や住所が官報に掲載されますが、一般の方はそもそも官報を閲覧すること自体がほとんどありません。
また、官報は行政機関の休日を除いてほぼ毎日発行されており、自己破産の情報が掲載されている号外は100ページを超える場合もあります。
そのため、官報を閲覧する機会自体がほとんどないことに加えて、官報に記載された膨大な情報や破産者の中から、なんの手がかりもなくたまたま知り合いが自己破産した情報を発見する可能性は低いです。
よって、氏名や住所が官報に掲載されたとしても、親族、知人、職場の同僚などに自己破産をしたことを知られてしまう可能性は低いと言えます。
仕事で官報を取り扱う業者が自己破産した個人の情報等をみだりに漏洩する行為に対しては、刑事罰が課せられる可能性がある。
一般の方が官報を閲覧することはほとんどありませんが、金融機関、不動産業者、貸金業者などは業務として官報をチェックする機会があります。
もっとも、上記業者が官報に記載されている情報を取り扱っているような場合でも、官報から知り得た自己破産の情報を周囲の人間に言いふらしたり、インターネットでむやみに公開したりすれば、罰則の対象になる可能性があります。
自己破産した個人や法人の情報を漏洩したり公開したりする行為は、刑法の名誉毀損罪に該当する可能性があるからです。
名誉毀損罪は刑法第230条に規定されており、法人を含む他人の名誉を公然と毀損した場合に成立する犯罪です。3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の対象です。
公共性や公益性などが認められる場合は、例外として名誉毀損罪が成立しない場合もありますが、官報に記載された個人情報を個人や業者が転載したり公開したりすることは、公共性や公益性が認められる可能性は低いといえます。
また、上記漏洩行為等は個人情報保護法違反に該当する可能性もあります。
同法は、「個人情報」について不当な取り扱いをした業者に対して、緊急の必要がある場合に違反行為の中止や是正措置の命令を出せる旨を定めています(第42条第3項)。命令に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になります。
そして、破産者の氏名や住所などは生存する個人の情報であり、かつ特定の個人を識別できる情報なので、一般に同法が保護する「個人情報」に該当します。
業者が官報に記載された破産者の情報を取り扱うのは、あくまで業務のためです。刑法や個人情報保護法に違反してまで破産者の情報を公開する可能性は非常に低いといえます。
過去に自己破産の情報が公開された事件(破産者マップ事件)
ただし、官報に掲載された自己破産の情報がインターネットなどに転載される可能性は、残念ながら0ではありません。実際に、官報に記載された破産者に関する情報がウェブサイトで公開された前例があるからです。
2019年3月に「破産者マップ」という名称のウェブサイトにおいて、「破産者マップの係長」と称する運営者の手によって、過去に官報に記載された破産者の情報を掲載する行為が行われました。
官報に記載された破産者の情報を収集してデータベース化し、Googleの位置情報サービスである「Googleマップ」に関連付けることで、Googleマップ上で破産者の情報を可視化できる状態にするものです。
同月15日に運営者がSNS上で破産者マップの削除申請フォームを公開したこともあって、破産者マップの情報はインターネット上でまたたく間に広まり、同月16日には1時間あたりで230万アクセスに達するほどの騒動になりました。
破産者マップで公開された主な情報は、破産した個人の氏名や法人の名称、住所、事件番号、官報の公示日、管轄の裁判所などです。Googleマップに表示されるピンをクリックすると、破産者の氏名や住所などの情報を閲覧できる仕組みです。
その後、破産者のプライバシーや名誉を侵害しているという批判、削除を装って破産者に金銭を要求する詐欺事件の発生、被害対策の弁護団の結成、個人情報保護委員会による行政指導などによって、破産者マップは同月19日に運営者によって閉鎖されました。
自己破産をすると、国の機関紙である官報に氏名や住所などが掲載されます。官報に掲載される機会は最大2回で、手続の開始決定と免責許可決定のタイミングです。
もっとも、一般の方が官報を閲覧する機会はほとんどないこと、官報には膨大な情報が掲載されることから、官報に掲載されても、そこから知人などに知られてしまう可能性は非常に低いです。
ただし、官報に掲載された自己破産の情報を、インターネットで公開された事件が過去に発生した点には注意しましょう。自己破産について情報をみだりに公開された場合には、できるだけ早く弁護士に相談するのがおすすめです。