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よくテレビなどで「築200年」などという家を見ることがあります。
あなたも街を歩いている時に、風格と歴史を感じさせ、ほとんど文化財と言って良いくらいの家を目に止めたことがありますよね。
年月と風雨に耐え、今もまだまだ快適に暮らせる、そのような家は、普通の家と何が違うのでしょうか?
今回は、江戸時代から100年以上長持ちしている家を取り上げ、丈夫で長持ちする秘訣を探っていきたいと思います。
日本約30年。アメリカ約100年。イギリス約140年。
この数字、何の数字かお分かりになるでしょうか。
実はこの数字、各国の住宅の平均寿命なんです。
日本の住宅は、イギリスの住宅に比べ5分の1の年月しか住めないことになりますね。
家の寿命が約30年ということは、30歳で家を持ったとして住宅ローンの終わる定年前には、もう一度建て替えなければならないということです。
そして実際、定年時の退職金をリフォームや建て直しに使わなければ住めないような家が、現代の日本には多く見られます。今後は、さらに増えることでしょう。
ご存知のように、日本は自然災害の多い国です。
先の東日本大震災を例にあげるまでもなく、世界的な地震大国でもあります。
昔の日本人は、そのような自然や気候的制約を意識し、そしてそれを活かした家造りをしてきました。
たとえば、奈良の法隆寺は建立されてから約1400年もの間、風雨や各種災害に耐えてきました。
日本には、優秀な伝統建築技術がちゃんとあるのです。にもかかわらず、どうして日本の家は短命になってしまったのでしょうか。
1-1. 日本の家が短命なワケ①
まず考えられる理由は、高度経済成長期の、過剰な経済合理性に基づいた採算性重視のツケです。
高度経済成長期の昭和30~40年代、日本社会は、東京オリンピックや大阪万博などの開催による特需をはじめとして、「大量生産大量消費」型の経済活動が一気に加速しました。
終戦直後の復興から続く一連の経済成長は「東洋の奇跡」と呼ばれ、世界的にも稀な社会の急速な発展を遂げました。
各地方から、東京・大阪・名古屋の三大都市圏への人口流入が加速し、日本の人口の半分以上がこの地帯に集中するという大移動も起き、今に至っています。
ハウスメーカー主導の家づくりがもたらした品質の低下
日本の住宅事情が変わり始めたのもこの頃です。
伝統的地域社会は崩壊しはじめ、核家族化が進み、多摩ニュータウンなどに代表される大型のベットタウンに住み、スーパーマーケットで買い物という暮らしに変わりました。
それまでの日本の伝統的な家づくりは、地域に根差した職人さんの手によるものでした。
しかしこの時代、住宅に求められたのは「早く、安く、大量に」です。
この流れを牽引したのが、大手主導のハウスメーカーです。
ハウスメーカーによる過剰ともいえる採算性の追求。安くて早い家の量産。
そのニーズに応えるべく誕生した、安価な新建材の氾濫。
大手ハウスメーカーの家づくりは、特に、新築ラッシュとなった都市部で、効率よく住宅を建てることが最優先課題となり、どんな土地にでも合う四角い画一的な規格住宅が誕生しました。
大企業の生産力を活かして、「早く」「安く」そして、同じように効率良く建てられる「製品」として、規格住宅が建ち並び始めたのです。
現代日本の家づくりといえば、ハウスメーカーということになっていますが、海外にはこういった形態の企業は存在しません。
高度経済成長期に誕生した日本特有のものなのです。
日本の家屋が短命になった原因には、ハウスメーカー主導の家造りが生んだ品質低下の悪循環があります。
欧米の家づくりとの違い
一方、欧米の場合はどうでしょうか。
欧米では、親の世代が後世にまで残ることを前提に家を建てるので、建替えや取り壊しは滅多にありません。
日本のように、リフォームや建て替えにかかる費用が必要ないので、多少物価や税金が高くても、ずいぶんと悠々自適に暮らせているようにみえるのかもしれませんね。
またハリウッド映画を観ていると、その家の住民が自らペンキを塗ったり、芝刈りをしているシーンがよく出てきます。
西部劇なんかでは、丸太から家を自作したりしていますよね。
つまりDIY (do it your self)の文化が根付いているのです。
自分で計画を練り、自分の手足を使って作り上げたものなら、愛着もわきますし、長持ちさせたいと思いますよね。
1-2.日本の家が短命なワケ②
ハウスメーカーとしては、あまり長持ちする家を建ててしまうと、経営が成り立たなくなってしまいますね。
そこで、高度経済成長期に建てられた規格住宅には、すぐにダメになることが想定されている安い「新建材」が使われています。
この新建材も日本の家の短命化をもたらした原因ですので、具体的に見ていきましょう。
出典:https://www.gurutto-iwaki.com/detail/newsdetail_1833_383581.html
「新建材」とは化学合成品で作られた建材です。
高度経済成長期以降の住宅は、大事な柱や梁をボンドで貼付けた集成材、外壁材をセメント質原料で作られたサイディング、内装材をビニールクロスや合板フローリングなどの化学合成品で覆い、さらに、ガラスを原材料として作られるグラスウールなどといった化学繊維で出来た断熱材を詰め込んで施工しているのです。
こうすることで、見た目は傷ひとつない、頑丈そうな住宅が「早く」「安く」出来上がるのです。
こういった製品は必ず「劣化」します。
たとえば、断熱材が入っている家だと、外音と室温が高くなり、屋根材や外壁材が水を吸い込み、壁の中に内部結露が発生します。
これがカビや腐食の原因となるのです。
このような状態で30年も住み続けていると、本来の用途を果たすことは難しくなります。
大規模な塗り替えやリフォームをしないと、屋根材や外壁材が水を吸い込み、構造躯体の腐食が始まるのです。
構造自体の腐食が始まると、もう崩壊への過程をたどるしかありません。
2.長持ちしている家
次に、日本の長持ちしている家を見ていきましょう。
古くに建てられ、今もなお残っている家の作りを見ることで、家を長持ちさせるコツも分かるはずです。
2-1. 築1600年-正倉院
出典:http://shosoin.kunaicho.go.jp/ja-JP/Home/About/History
現在も残っている日本古来の代表的な建築物として、奈良県東大寺の「正倉院」が挙げられます。
西暦756年に明皇太后が聖武太上天皇の冥福を祈念して、天皇遺愛の品約650点と、約60種の薬物を奉献したのが始まりである、と言われています。
西暦756年ですから、1300年近く長持ちしてきたのですね。
もちろん、今も美しい姿のままです。
木だけしか使っていないのに、崩れることなく、存在し続けられたのでしょうか?
その理由は、工法にあります。
正倉院で採用された工法は「板倉造り」といい、杉の柱に溝をほり、杉板を落とし込んで板壁を作り、基本的な構造を造るものです。
杉の粘り強い性質を耐震性に活用した、丈夫な構造で、杉板の構造材がそのままで仕上げ材になり、調湿効果のある木の良さを最大限に生かした工法なのです。
正倉院は、この板倉造りという工法で建てられているために、湿度が高く地震が多い日本でも1600年という長い間、その姿を保ち続けているのです。
2-2. 桂離宮
出典:https://kotobank.jp
桂離宮は、京都市西京区桂にある皇室関連施設です。
1615年前後に完成したものとされています。
創建以来、永きにわたり火災に遭うこともなく、ほとんど完全に創建当時の姿をとどめている貴重な家屋です。
昭和初期に来日したドイツの建築家ブルーノ・タウトが、桂離宮を見て、「泣きたくなるほど美しい」と言ったことでも知られています。
桂離宮が建てられた工法は、数寄屋造りと呼ばれています。
数寄屋造りの建材は、柱や床板には竹や杉丸太、板材には桑の一枚板が使われることが多く、壁も白壁は採用せず、原則として土壁仕上げです。
その制限された条件ゆえか、技法も多彩に発展し、現在残されている建造物にも職人さんたちの技術の粋を見て取ることができます。中でも、桂離宮は天守、広間、床の間、違い棚、縁側や濡れ縁など、細部にわたって凝ったデザイン高度な職人技が確認されています。木と土でできた家は通気性が良く、気温も湿度も高い日本の夏を快適に過ごすには最適といえ、江戸時代には全国的に広く数寄屋造りの家が建築されました。
「木は腐って長持ちしない」と考えがちですが、それは偏見で、木材のみを使い、安価な断熱材を使っていなければ、外気との温度差がほとんどなく、気密も低いので内部結露も起きず、家は長持ちします。
伝統的な工法に則ればいくらでも長持ちするのですね。
日本の四季のことや使う材料が年月を経って変化してくることを想定して全て計算しつくして建てるので今の建物とは比べ物にならないくらい丈夫で長持ちしたのです。