https://clinic.tosaki.jp/diabetes_hba1c.html
HbA1c値と血糖値
HbA1c【ヘモグロビン・エーワンシー】値とは、赤血球中のヘモグロビンという色素のうちどれくらいの割合が糖と結合しているかを示す検査値です。
ふだんの血糖値が高い人はHbA1c値が高くなり ふだんの血糖値が低い人はHbA1c値も低くなります。
過去1-2ヶ月の血糖値の平均を反映して上下するため、血糖コントロール状態のめやすとなる検査で多くの病院の糖尿病外来で毎月測定されています。
「今日は病院で検査だから」と食事を控えると、血糖値を下げることはできますが、 HbA1c値は下がりません。
反対に最近2ヶ月くらいがんばって食事を控えた人は、検査の前日だけたまたまたくさん食べてしまったとしてもHbA1c値は上がりません。
気温にたとえると、「血糖値」が「気温」で、「HbA1c値」は「月間平均気温」のようなものです。
およそですが、
- HbA1c値 5.6%未満(NGSP値) ふだんの血糖値が正常範囲内の人
- HbA1c値 5.6-5.9%(NGSP値) 時々血糖値が高めの人(某大手企業では会社健診でこの数値が出ると呼び出され生活指導となります)(境界型糖尿病)
- HbA1c値 6.0-6.4%(NGSP値) 糖尿病予備軍(境界型糖尿病)、心筋梗塞や脳梗塞などのリスク(危険)が血糖値が正常の人より2倍以上高くなる状態
- HbA1c値 6.5%以上(NGSP値) 糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞などのリスク(危険)が血糖値が正常の人よりさらに高くなる状態
- HbA1c値 7.0%以上(NGSP値) 糖尿病の3大合併症(腎症、網膜症、神経障害)が進行しやすい状態
- HbA1c値 8.0%以上(NGSP値) 糖尿病の3大合併症(腎症、網膜症、神経障害)がとても進行しやすい状態、他の病気で手術をする時にこの数値では許可されない場合が多く、手術はHbA1cを下げてからとなる
- HbA1c値 9.0%以上(NGSP値) 糖尿病そのものによる倦怠感、疲労感を感じやすく、感染症になると重症化しやすい状態
- HbA1c値 10.0%以上(NGSP値) 糖尿病の治療のために医師から入院を勧められる状態
と考えられます。
(正確な診断には血糖値もあわせて評価します。)
HbA1c値 7%(NGSP値)未満を維持できれば合併症(神経障害、網膜症、腎症)はでにくいですが、HbA1c値 8%(NGSP値)以上の状態が続くと合併症が出る可能性が非常に高くなります。
心血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞)や死亡に至る確率を下げるには、HbA1c値6%未満が望ましいです。
ふだんの血糖値によるHbA1c値のめやすは以下のとおりです
HbA1c値(NGSP値) 6.2%未満 6.2-6.8% 6.9-8.4% 8.4%以上
食前血糖値 mg/dl 100未満 100-119 120-139 140以上
食後血糖値 mg/dl 120未満 120-169 170-199 200以上
HbA1c値が高いとどうなる?
HbA1c値 が8%(NGSP値)以上
HbA1c値が8.0%以上 は合併症が進みやすい状態です。
とくにHbA1c値が8.4%(NGSP値)以上の状態を放っておくと、以下のような経過をたどる人がほとんどです。
5年程度で、両足のしびれがはじまり、足の感覚が麻痺し、ひどいと痛みにかわります。
7-10年程度で、視力が低下します。最悪の場合は失明します。レーザー光凝固手術で光があるかないかがわかる程度は保つことができます。国内で毎年3500名以上が糖尿病で失明しています。
10-13年程度で腎不全となり人工透析が必要になります。糖尿病が原因で透析を始める人は国内で年間1万4000名以上です。
ごくまれに透析をしないことを選択される人がいらっしゃいますが約2週間で死亡されます。
糖尿病で透析が開始となるとその後の50%生存率は約4年です(約半数の方が4年で亡くなるということです)。統計的には10年以内にほとんどの方が亡くなります。(個人差があり長く生きられる人もなかにはいらっしゃいます)
また他にも急に心筋梗塞や脳梗塞になったり、足が腐って(えそ)切断(年間3000名以上)が必要になったり、癌になったり(血糖値が高いと癌の確率は1.3倍に上昇)、で入院されたり死亡される場合もあります。
この状態の人は、今何も症状がなくても合併症はどんどん進んでいると考えられます。すぐに治療を始めないと大変危険な状態です。糖尿病専門医の受診をおすすめします。眼科もすぐに受診しましょう。
治療により血糖値やHbA1c値が下がれば、上記の経過は遅らせたり止めることができます。ただあまりに治療開始が遅いとその後HbA1c値が下がっても合併症の進行を止められなくなることがあります。
HbA1c値 が7.0~7.9%(NGSP値)
HbA1c値が7.0~7.9%(NGSP値)の状態を放っておくと、多くの人が数年以内にHbA1c値が8%以上となります。HbA1c値が高いほど悪化の確率は増えます。特にHbA1c値7.4%以上の人は危険です。ちょっと食事を気をつけるなどで改善できるレベルではありません。その後の経過は上記に示したとおりです。
またHbA1c値 7.0~7.9%でも合併症(神経障害、網膜症、腎症)は(HbA1c値が8%以上のときほどの速度ではありませんが)進みます。
心筋梗塞、脳梗塞、足えそ、癌などの危険が血糖値が低い人より高いのは変わりません。
この状態が続くのは良いことではありません。主治医の先生に相談し治療に変化がなければ専門の医師を受診しましょう。まだどこにも受診していない人はすぐに受診してください。内科に毎月、眼科に年一回以上の通院をおすすめします。
HbA1c値 が6.0~6.9%(NGSP値)
HbA1c値が6.0~6.9%(NGSP値)の状態を放っておくと、多くの人が数年以内にHbA1c値が7.0~7.9%となり、その後また多くの人が数年で8.0%以上となります。その後の経過は上記のとおりです。
膵(すい)臓のβ細胞がインスリンを出す力は年齢とともに落ちていき、糖尿病と診断された時点ですでに正常の半分以下に落ちていると考えられます。血糖値が高いほど膵臓は無理をしているためインスリンを出す力は加速度的に悪化していき、血糖値がどんどん上がってしまいます。
また熱が出るなどの感染症で血糖値は急上昇することがあります。血糖値が高いほどインスリンが効きにくい状態となり次の高血糖を招くという”糖毒性”という悪循環に陥る場合があります。
この状態の人は合併症の危険は少ないグループに入っていますが、油断すると悪化します。毎月検査をして悪化していないか確認しながら治療を継続する必要があります。まだどこにも受診していない人はすぐに受診してください。
食事療法、運動療法、膵臓β細胞の力を守る薬をはじめることをお勧めします。
HbA1c値 が5.6-5.9%(NGSP値)
食後の血糖値にまったく異常がない人のHbA1c値は5.5%(NGSP値)以下です。(5.4~5.5%でもブドウ糖負荷試験をすると境界型糖尿病と診断される人もいます。)
HbA1c値が5.6-5.9%の状態を放っておくと、半数以上の人が数年以内にHbA1c値が6.0~6.9%となり本格的な糖尿病と診断される状態に発展します。その後の経過は上記のとおりです。
膵(すい)臓のβ細胞がインスリンを出す力は年齢とともに落ちていきます。境界型糖尿病の時点ですでに膵臓のβ細胞がインスリンを出す力は弱り始めている場合が多く、また正常であっても現在多くの負担がかかっていてその後すぐに低下する可能性が高いでしょう。
少しでも早い段階から膵臓が楽をしてインスリンを出す力が落ちないようにすることが大切です。それができなければ糖尿病はどんどん進んでしまいます。
この状態の人は専門医以外では放置可能と判断されてしまう場合が多いです。
しかし、ブドウ糖負荷試験という検査で現在の膵臓β細胞がインスリンを出す力を測定して、この結果にもとづいた適切な対応が必要です。
少なくとも食事療法は開始する必要があります。管理栄養士による栄養指導だけでも受けることをお勧めします。悪化していないか確認するため半年~1年に1回の検査もうけましょう。