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パソコンが使えない年齢層といえば、中高年というのが通り相場でした。パソコンを使う機会が少なかったため、当然といえるでしょう。
しかし、パソコンが使えない若者が急速に増えていることをご存じでしょうか。「若い世代はパソコンが使える」というイメージを持っている方も多いと思いますが、最近はスマートフォンやタブレットの普及により、若者のパソコン離れが進んでいます。そこで今回は、若者のパソコン離れの原因と弊害についてご紹介します。
パソコンの普及
十数年前までは、パソコンを使うといえば WordやExcelなどのアプリケーションを使うことと同じ意味合いでした。その後、電子メールによる情報交換やブラウザを使ってインターネットから情報を得るという使い方が増加します。
総務省の「平成27年通信利用動向調査」によると、平成11年末の一般家庭(世帯)におけるパソコンの普及率は37.7%にすぎませんでしたが、平成17年末には80.8%と8割を超えています。
スマートフォンの登場
その後、携帯電話でもインターネットに接続できるようになりましたが、使いやすさや速度の問題から利用頻度はそれほど増えませんでした。ところが、スマートフォンの登場により、インターネットや電子メールが利用しやすくなったことに加え、回線速度の向上によって動画閲覧も可能になりました。
つまり、パソコンの操作方法を習得してから机の前でインターネットを楽しむスタイルから、スマートフォンの簡単な操作で「手のひらの上でインターネットを楽しむ」スタイルに移行していったのです。
さらに、スマートフォンは常に携帯できるデバイスのため、家や学校のコンピューター室でしか操作できないパソコンと違い、利用頻度が増え、利用時間も格段に長くなりました。また、操作に特別なスキルを必要としないため、インターネットを使い始める年齢層が非常に低くなってきました。
総務省の「平成27年通信利用動向調査」によると、平成27年末の一般家庭(世帯)におけるスマートフォンの普及率は72.0%、タブレット端末の普及率は33.3%に達しています。
一方、パソコンの普及率は平成21年末に87.2%にピークを迎えた後、減少と増加を繰り返し、平成27年末の普及率は76.8%となっています。
キーボード
スマートフォンは基本的に指1本で操作しますが、パソコンではほぼ全ての指を使って入力します。また、パソコンでは作業効率を上げるために「ショートカットキー」を多用しますが、スマートフォンにはこの機能はありません。
ショートカットキーを知らないために、パソコンでの作業スピードが遅くなることがあります。ブラインドタッチできない若者も増えているといわれます。
マウス
スマートフォンでもドラッグやスクロールを行いますので、マウスを使ってドラッグやスクロールをする意味は理解していますが、パソコンでマウスを使った経験が少ない若者も増えています。パソコン操作に慣れていない若者の場合、マウスを握る手が隣の席までいってしまうこともあるようです
コピー&ペースト
パソコンでは当たり前のコピー&ペースト。しかしスマートフォンを使っていると、コピー&ペーストせずに文字を直接打ち込んでしまうことがありませんか?スマートフォンで意外と面倒な操作が、テキストのコピーです。
コピー範囲を指定しなければなりませんが、小さな画面でカーソルを動かすことはなかなか大変です。さらにコピー範囲の指定後、メニューから「コピー」を選ぶ必要があります。
Windowsパソコンであれば、左ボタンを押しながらマウスを動かすか、シフトキーを押しながら十字キーを動かしてテキストを選択し、「Ctrl」+「c」でコピー(「Ctrl」+「v」で貼り付け)ができます。
フォルダー・階層構造
パソコンで仕事をする上で「フォルダー」や「階層構造」といった概念を理解していないと、作業効率が落ちる上に、データの整理もできません。
スマートフォン・タブレットのアプリケーションでも、実際はフォルダーや階層構造を使ってデータの管理を行っていますが、見た目にはフォルダー・階層構造を全く意識させない作りになっています。そのため、スマートフォンユーザーにフォルダーや階層構造を理解させることは難しい場合があるのです。
マルチタスク
スマートフォンは、電話機能や音楽再生機能などを除けばシングルタスクです。基本的には、複数のアプリケーションを同時に実行することはできません。
そのため、例えばWebサイトの閲覧とメールの作成を交互に行う場合など、画面の切り替えが手間になりストレスが溜まることがあります。パソコンはマルチタスクなので、別々のウィンドウで並行して処理ができます。
マルチタスクができるということは慣れてしまえば非常に便利なため、スマートフォンユーザーにもパソコンの「利点」としてすんなりと受け入れられる点です。
パソコン離れの弊害
ビジネスシーンでスマートフォンやタブレットが利用される機会も増えていますが、パソコンの出番がなくなったわけではありません。
しかし、スマートフォンやタブレットに慣れ親しんできた世代は、パソコンを使う必要性があまりなかったために、パソコンになじみがないまま社会人になります。
そのため、「新入社員はパソコンが使えて当たり前」の時代から、「パソコンの使い方を知らないことが常識」である時代になりつつあります。新入社員にパソコンの使い方を一から教育することになれば、企業は大きな負担を抱えなければなりません。
学生時代にパソコンを利用することはあっても、多少学んだだけでは使いこなせるようになりません。特に文書作成ソフトのWord、表計算ソフトのExcel、プレゼンテーションソフトのPower Pointを使えないことは、仕事を進める上で致命的です。
おわりに
いくらパソコンが使えないといっても、情報化社会で育ってきた若者です。会社に入って少し訓練すれば、技能はすぐに身に付けられるでしょう。
しかし、全ての人がこのような教育機会を得られるわけではなく、スタートラインで差がついてしまう可能性もあることから、新たなデジタルデバイド(ITを使いこなせる者とそうでない者との間に生じる格差)の原因となる可能性もあります。
現在はキーボードを装着できるスマートフォン・タブレットも出てきていますので、そのような端末を使用し、学校教育の一環として、若者のパソコンに対する技術や知識を広げていくことも1つの解になるのではないでしょうか。