https://data.wingarc.com/flea-market-app-20634
日本でも、リサイクル業界にデジタル化の波が押し寄せています。
2019年度上期、中古小売業界の売上高は4000億円を突破しましたが、リサイクルショップの倒産が続いているそう。2018年度にはリサイクルショップの倒産が30件に上りました。(帝国データバンク調べ)2017年度は15件だったので、2倍に増えた計算です。
この一見矛盾する現象が起こっているのは、リサイクルショップがフリマアプリにシェアを奪われているため。例えばCtoCのフリマアプリ「メルカリ」には、国内外ブランドのリユースファッションアイテムが多数出品されており、若年層を中心に人気を集めています。はじめしゃちょーといった人気YouTuberを起用した宣伝も注目の的。
フリマアプリが影響したと見られる倒産例で有名なのは、リサイクルショップ経営のAKIRA(東京都)。
同社は、子供服に特化したリサイクルショップ「ECO&KIDS
AKIRA」を展開していました。少子化に伴いブランド物の子供服を買う人が増えたものの、幼児は成長が早いため高額な服がすぐに着られなくなります。こうしたブランド子供服のリサイクル販売に目を付けたAKIRAは、2011年度には年商1億円を突破するまでに成長しました。
しかしメルカリが台頭すると共に若い世代の顧客を奪われ、さらに中古のブランド子供服の確保自体が難しくなったことで、2018年度に倒産を申請しました
売り手がフリマアプリに流れるのは当然、という見方もあります。というのも、リサイクルショップは買取品に固定費と利益を乗せて販売するため、売り手からなるべく安価で買い叩こうとするためです。
ブランドの元値を知っている売り手が「それなら自分で値段を決められるフリマアプリで売ろう」と考えるのは自然なこと。また、リサイクルショップでは高値が付きにくいニッチなアイテムでも、大勢にリーチできるフリマアプリでは言い値で買い手が付きやすいのも魅力のひとつ。
買い手にしても、家から出ることなく、何千というアイテムの中から条件に合ったものを探せるのは嬉しいですよね。
こうした劣勢の中でリサイクルショップが生き残るには、フリマアプリではできないサービスを強化する必要があります。
例えば、実際の商品を手に取りながら詳しい説明を聞けるのは、リサイクルショップならではのメリットです。特にPC周辺機器やスマートフォンなどは、買う前に実物が見られないのは不安なもの。また、高額な商品ほどフリマアプリでは買いづらい、という消費者心理も働くかもしれません。
となると今後のリサイクルショップは、
・商品を精鋭化する
・カスタマーケアを充実させる
という方針で生き残りを図っていくのかもしれません。そうなると消費者側でも、それぞれのチャネルで買うものが変わってくるのではないでしょうか。いずれにせよ、リサイクルショップのように売り手と買い手を仲介するだけのビジネスモデルに限界が来ていることには間違いはなさそうです。そして、この傾向は世の中にある仲介ビジネスの多くに受け継がれる可能性も多いにあります。特に、不動産の仲介手数料など貸し手市場だった時代のビジネスモデルの名残りが未だにある業界においては、メルカリをきっかけにシフトチェンジが起きたリサイクル業界のように、何かをきっかけに価格破壊が急激に進むのではないでしょうか?
しかし、リサイクルショップには、すぐに買って持ち帰れる、実際の商品がその場で確認できる、触ってみることができる、欲しいと気づいていなかったアイテムに遭遇できる、現金で買える、などのメリットがあります。何かを売りたい場合にもアイテムを持ち込んですぐに換金できる、メッセージのやりとりや梱包、発送の手間、そして以外に面倒なレビューを書く手間が省ける、というメリットも確実に存在します。アプリ経由ではできないユーザー体験が提供できるという強みをうまくいかせればリサイクルショップにも勝算はあるのかもしれません。
かつてオンラインのリサイクルと言えば、日本ではヤフオクが圧倒的な存在感でした。
しかし、会員になるための手続きの煩雑さやパソコンユーザーを前提としたユーザーインターフェース、すぐに買うことができず、金額も不明瞭なオークション制度、さらにはサービスを使わなくても毎月徴収される月額費用などに不満を抱いたユーザーの多くがスマホの普及と共にメルカリに流れていきました。モバイルユーザーのニーズを取り込み、ユーザー視点での手軽さ、いわゆるユーザビリティーをとことん重視したメルカリが今では優位に立っています。
とは言え、今現在トップだからと言ってメルカリもその立場にあぐらをかいている余裕はなさそうです。実際、コインランドリーに出品する服を撮影するためのブースを設置するなど、メルカリは新しいサービスを常に生み出し続けています。次はどんなサービスが私の暮らしをより豊かにしてくれるのでしょうか?個人間の支払いがより円滑にできるようになり、かつ安全性を確保できるのであれば、例えば、インスタグラムに上げた画像にタグ付けするだけで買い手を探すことができるようになるかもしれません。お金のやりとり以外の面でも、梱包や発送の手間、個人情報の管理など、改善もしくは効率化できることはまだまだたくさんありそうです。知恵を絞った競争が必須の企業側はさぞかし大変であろうと想像しますが、1ユーザーとしては、サービスが洗練されていくことはとてもよいことであり、今後がとても楽しみですね。