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人手不足が慢性化している物流業界の救世主として、注目を集めているのがドローンの存在です。
すでに海外を中心に配達用ドローンの実証実験が行われており、本格的に実用化される日も近いと言われています。今回は配達用ドローンのニュースをお届けするとともに、ドローン配達の未来について語っていきます。
ドローン配達とは、その名の通り、機体に専用のボックスを装着したドローンを使って、配達を行うことです。聞こえは単純ですが、ドローンを使った配達は、通常の配達に比べて、様々なメリットを持っています。
最大の利点としては、手軽に空輸が行えるようになったことです。例えば、砂漠やジャングル、孤島など、車や人が移動しにくい場所でも、空を飛ぶドローンにとっては全く問題にならず、さらに直線距離で移動できるため、速やかに配送が行えるようになります。
また、ドローンはプログラムによって自動飛行もできるため、離陸・配送・帰還など、すべての工程を全自動で行うことも可能です。
慢性的な人手不足に陥っている物流業界にとっては、まさに神の一手となる存在といえるでしょう。
大変便利なドローン配達ですが、現状では法規制が追い付いていなかったり、安全性の問題が完全にクリアされていないことから、一部の例外を除いて実用化に至ってはいません。
しかし実用化されれば間違いなく物流の概念が大きくが変わるとあって、海外を中心に実用化に向けた実証実験がどんどん進められています。
ここでは世界、そして日本のドローン配達の実証実験の事例をいくつかご紹介します。
ドローン配達をリードする「Amazon」
アメリカに本拠を構える世界最大のECサイト・Amazonは、比較的早い段階でドローン配達の実現化に向けて乗り出しており、2013年12月には、アメリカのニュース番組内で「5年以内に実用化させる」と宣言したことでも話題になりました。
残念ながら5年以上が経過した現在も実用化には至っておりませんが、その原因は技術面の問題ではなく、法規制の方にあるようです。
実際に、注文から30分以内に配達するという「Amazon Prime Air」というサービスを開発しており、2016年にイギリスで行われた実証実験では、顧客の注文を受けてから、わずか15分で配達を完了することに成功しています。
物流大手もドローン配達に参入「DHL」
ドイツに本社を置く、世界最大の輸送・物流会社のDHLは2013年から「パーセルコプター」という物流ドローンの独自開発を進めてきました。
2016年には標高1,200mの山岳地帯にあるライト・イム・ヴィンクルとアルムという2つのスポットに自動配送ステーションを設置し、両地点間を自動でドローンが配達する実験を成功。
険しい山道で、車であれば本来30分かかるところを、わずか8分で配達することができました!
2018年にはタンザニアのヴィクトリア湖に浮かぶ、ウケレウェ島への医薬品輸送実験でも成功を収めています。同島には約40万人が住んでいますが、島内だけでの医療はインフラと特異な地形によって限界がありました。しかしパーセルコプターの登場によって、問題解決に至る新たな扉が開けたと言えるでしょう。
ドローン先進国・中国でも活発に「京東商城(じんどんしょうじょう)」
中国に本社を置く、中国語圏向け巨大EC会社の京東商城は、農村部限定ではありますが、世界で初めて、ドローン配達を実用化させた会社として話題になりました。
国土が広い中国では、交通網が発達していない地域も多く、年々配送需要が拡大する中で、“ラストワンマイル”(顧客へ商品を届ける物流の最後の区間)の対応が課題となっていました。
そこで京東商城は、農村や辺境地域への配達の解決策として、2015年12月より、ドローン事業プロジェクトを始動。地方政府などと提携しながら、配送実績を積み上げてきました。
また、同社は2018年に、標高5566mのエベレスト・ベースキャンプ付近で物流ドローンのテスト飛行を行い、成功を収めています。
チベット高原は、中国内でも広大な土地である一方、人口が少なく、インフラや気候的な問題から物流に課題を抱えていましたが、今後はドローン配達を活用することで、配送スピードの大幅短縮や人的コストなどを大幅に減少させることが可能になると期待されています。
実証実験を重ねている「楽天」
最後に紹介するのは、日本を代表するIT企業の楽天です。同社は2019年7月より、日本で初めてドローンを使った一般利用者への有料配送サービスをスタートさせました。
サービスの舞台となるのは、横須賀にある東京湾唯一の無人島・猿島。海水浴やバーベキューなどで年間約20万人が訪れる人気の観光地と知られる猿島ですが、島内には小さな売店はあるものの、コンビニやスーパーはなく、バーベキューで使う食材や飲み物は乗船前に調達することが必須になっていました。
しかし、追加で何かを購入したいという状況になっても、船は1時間に1度しか出ておらず、簡単ではありませんでした。
そこで登場したのが配送用ドローンです。
本土のスーパーの屋上から猿島のヘリポートまでの直線距離1.5kmを自動飛行によって片道約5分で往復し、足りない食材や飲み物を運んでくれるようになったのです。利用方法もシンプルで、専用アプリから欲しい食材を選ぶだけ。
配送料として追加で500円を支払うだけで、1度に最大4㎏までの商品を届けてくれるようになりました。
サービスの提供は9月末までの期間限定ですが、利用者の反応は上々。サービスを提供している楽天は「利用者の需要やドローン配送のノウハウを蓄積して、将来的には買い物困難者の救済や災害支援に貢献したい」と発表しています。
ドローン配達がもたらす明るい未来
限定的ではありますが、すでに実用化も始まっているドローン配達。諸問題が解決して、全面的な実用化に至れば、世界の物流業界に革命が起こると見て、間違いありません。
日本においては、過疎地域に暮らし、積載率の低い非効率な輸配送や、食料品などの日常の買い物が困難な状況に置かれている“買い物弱者”の問題が解決されることに大いに期待が持てます。
また、日本は地震や台風などの自然災害が多い国ですがドローン配達が使われるようになれば、被災地への緊急物資や薬などの配達が今よりはるかにスムーズになるでしょう。
ドローン配達によりもたらされる未来は非常に明るいです。だからこそ1日でも早くドローン配達が実現することを願うばかりです。
求められるのは熟練したドローン操縦者!
物流業界に革命をもたらすドローンですが、そのほかの仕事の現場(スマート農業や、水中ドローン)でも、年々需要が高まってきています。それと同時に求められるのが、ドローンを扱える人材です!