2. 入浴の順序 ~一番風呂は、何とやら~
「一番風呂は、家長の特権」なんていう言葉があります。
誰も入っていない「新湯」(あらゆ、さらゆ、しんゆ|更湯〈さらゆ〉とも)は、不純物が少なく、清潔ですし、
自分以外の垢や、体毛、体液の混じった風呂に入るのは、気分が良くないからです。
ですが、一方で、
「さら湯は、身の毒」というように、「一番風呂は、身体に良くない」とも言われます。
①浴室が温まっていないので、
身体が冷えてしまいますし、
浴室と湯船との温度差が大きいので、身体に負担がかかってしまいます。
②さら湯は、不純物が少ないので、
熱の伝わり方が急で、お肌への刺激が強く(ビリビリ、チクチク)、また、
浸透圧の作用で、皮脂や、ナトリウム、カリウムなどのミネラルを、お湯にとられてしまいます。
つまり、二番目以降に入る方が、
①前に入った方が、浴室を温めてくれますし、
②前に入った方のミネラルなどが溶け込んで、
身体に負担が少なく、お肌にもやさしいです。
「それでも一番風呂に入りたい!」という方は、
①あらかじめ、浴室を温めて、
②入浴剤などで、さら湯の負担をなくせば、
…優雅じゃあないでしょうか(笑)
3. 入浴の温度と時間
入浴の温度は、
欧米では「微温湯」(ぬるまゆ、ぬるゆ、びおんとう|36~38℃)が、好まれるのに対し、
日本では「熱い湯」(42℃~)が、昔ながらに好まれる傾向にあります。
「ぬるま湯」が、副交感神経を刺激し、抑制作用(リラックス効果)をもたらすのに対し、
「熱い湯」は、交感神経を刺激し、興奮作用(ストレス効果)をもたらすなど、
その神経系への作用は、対照的です。
「ぬるま湯」は、就寝前の入浴に、
「熱い湯」は、活動前の入浴など、
場合によって、使い分けてみるのもいいかもしれません。
湯船に浸かる時間は、
「ぬるま湯」が、およそ20分くらい、
「熱い湯」は、およそ10分くらいが適当とされています。
ちなみに、
体内で消費される酸素の量(≒入浴による疲労)は、
熱くもなく、冷たくもない、体温に近い温度「不感温度」(36~37℃)を基準にすると、
38~39℃で、およそ10%
40℃で、20~30%
42~43℃で、およそ40%
と湯船の温度が上がるに連れて、増えていきます。
ヒートショックプロテインで、シミ・シワを防ごう!
熱いお湯に浸かるなど、身体が熱などの刺激を受けると、
その刺激に対抗するために、「熱ショックタンパク質」(Heat Shock Protein、HSP|ヒートショックプロテイン)というタンパク質が作られ、
シミ、シワの予防になることが知られています。
ヒートショックプロテインは、
メラニンの過剰な生成を抑制し、シミになるのを防ぎます。
コラーゲンを分解する酵素の働きを弱めるため、シワの予防にもなります。
しかも「免疫力を高める」とも言われ、お肌にも身体にも良いこと尽くめです。
ヒートショックプロテインは、熱などの刺激を受けてから、2日間増え続けるので、
週1、2のペースで、41℃くらいのちょっと熱めのお湯に、15分程度浸かるといいかもしれません。
4. 入浴の手順
目次
STEP0. 食後
STEP1. 入浴前
STEP2. 入浴後
STEP3. 浴室から出た後
STEP0. 食後1時間は、入浴を避けるようにしましょう
入浴中は、血液が皮膚に集中し、消化器の血液の量が不足して、消化が悪くなるので、
食後1時間は、入浴を避けるようにして下さい。
特に、飲酒後の入浴は、
血管拡張作用が重なって、より血液が皮膚に集中し、
脳や心臓の血液の量が不足して、脳貧血(のうひんけつ、cerebral anemia)や循環虚脱(じゅんかんきょだつ、circulatory collapse)を引き起こすことがあるので、
絶対に避けて下さい。
STEP1. 入浴前には、かけ湯をするなど、全身に準備反応を与えましょう
「熱い湯」にいきなり入ると、
まず、湯の高温による急激な影響を受けないように、皮膚の血管が収縮して、血液を皮膚表面から遠ざけて深部へ送る現象がみられます。
この結果、皮膚に鳥肌が立ち、肌が青白くなり、脳や腹部の内臓に血液が集まって充血し、
血圧が上がります。
続いて、湯船に身体を沈めていくと、
水圧によって、動脈よりも壁が薄い、腹部の静脈などは圧迫されてつぶれ、
血管内の血液を押し出すために、心臓へ戻ってくる血液の量が一時的に多くなり、
心臓への負担が大きくなります。
健康な方もそうですが、特に、
高血圧、動脈硬化、心臓病の方がいきなり「熱い湯」に入るのは、非常に危険ですので、
入浴前には、かけ湯をするなど、全身に準備反応を与えて下さい。
「ぬるま湯」では、こうした反応は顕著ではありませんが、念には念を入れておいてはいかがでしょうか?
STEP2. 入浴後は、ゆっくりと立ち上がりましょう
湯船に浸かって、しばらくすると、
体温が上昇して、熱を外へ逃がすために、皮膚の血管が拡張して充血し、
脳や腹部の内臓の血液の量が少なくなります。
この状態で、急に立ち上がると、重力によって血液が足に溜まってしまい、
目眩(めまい)や立暗み(たちくらみ)など、いわゆる「起立性-低血圧」(きりつせい-ていけつあつ、orthostatic hypotension)を引き起こします。
健康な方もそうですが、特に、
低血圧の方が急に立ち上がると、脳貧血を起こして倒れたりすることがあるので、
入浴後は、ゆっくりと立ち上がって下さい。
浴室から出る前に、膝(ひざ)から下に、水をかけてみるといいかもしれません。
STEP3. 肌についた水滴は、十分に拭き取りましょう
浴室から出た後は、
すぐに、
乾いたバスタオルで、肌についた水滴を、十分に拭き取って下さい。
しかし、それだけでは不十分なので、
ドライヤーで、髪と一緒に、全身を乾かしてしまうと、なお良いでしょう。
くれぐれも風邪を引かないように注意して下さい。
自分の入浴を見直して、
自分の体質やライフスタイルを見極めて、
あなただけのバスライフ(bath life|入浴生活)を手に入れて下さいね。
以上です。